TBSラジオの「たまむすび」で赤江珠緒さんとピエール瀧さんが熱量高めで語っていた吉村昭さんの小説を読んでみたら、自分史上ありえないほどの速さで読み切ってしまいました。
漂流
江戸・天明年間、シケに遭って黒潮に乗ってしまった男たちは、不気味な沈黙をたもつ絶海の火山島に漂着した。水も湧かず、生活の手段とてない無人の島で、土佐の船乗り長平と仲間たちのサバイバルを描いた長編ドキュメンタリー小説。
アホウドリしかいない
漂流の末にたどりついた鳥島は、アホウドリしかいない無人島。火をおこす手段さえない彼らはアホウドリを撲殺して生肉を食べて過ごし、卵の殻に雨水をためて飲み水にします。この極限状態の中で、仲間は一人、二人と減っていくのです。
希望と絶望のオンパレード
次々と起こる予想外の展開と人間たちの行動がとにかく気になって一気に読んでしまいました。人は希望を失ったらダメなんですね。ゲームに取り入れられそうなネタも満載で、1981年に映画化されているのも納得です。
羆嵐
北海道の開拓村を突然恐怖の渦に巻込んだ一頭の羆。自然の猛威の前で、なす術のない人間たちと、ただ一人沈着に羆と対決する老練な猟師の姿を浮彫りにする。大正4年12月に起きた日本獣害史上最大の惨事を描いたドキュメンタリー長編。
ホラーを超える怖さ
羆に襲われた家を訪れたときの凄惨たる現場の描写、人を喰らう際の不気味な音に身の毛がよだちます。モデルとなった三毛別羆事件にかなり忠実で、この事件がいかに衝撃的だったかを思い知らされます。
どん底からの逆転
羆と対峙できるまともな武器がなく、頭数だけの無力で滑稽な人間たち。そして羆撃ちの名手が現れてからの急展開。決して派手な描写がないのに、息を呑む様な緊張感がありました。
淡々と引き込まれる
史料に忠実でありながら、誇張なく読者を引き込む文体がすごいです。この方が歴史の教科書を書いてくれていたら、もうちょっと歴史に詳しくなれたかもしれません。
困難な状況に直面した人間たちの滑稽さがユーモラスに描かれているのですが、同じ立場になったらきっと大差ないです。自然の恐ろしさと人間の無力さを痛感しました。
吉村さんの他の作品も読んでみようと思います。