写真は大好きな暮らしの手帖の中古本です。以前の記事で紹介した「百年」で5冊で525円に値下げされていたので、また買いました。藤城清治さんの描いた表紙の女性が美人なのです。というわけで、何度も買ってしまう中古の暮らしの手帖の魅力を長々と書いてみます。 ●製品レビューがかなり本気
今でこそインターネットで一般ユーザーの歯に衣着せぬ製品レビューを読めるようになりましたが、昔はそうもいきません。クチコミ情報もご近所さんに限られますし、新聞や雑誌の情報は企業の宣伝を兼ねているので本当のことはわかりません。
暮らしの手帖はそこにメスを入れました。ときには100人以上も集めて大規模な実験をしたり、1年間使ってみた結果なども書かれています。役立つ内容を嘘いつわりなく、という精神がいたるところから伝わってききます。近年ここまでやってくれる雑誌があるでしょうか。
主婦が参加して壮大なガスコンロの使用テスト。魚を焼いて、焼き色や味まで比較する徹底ぶりです。これがまた読みごたえがあるのです。
●写真や絵がかわいい
これはもう作り手のセンスによるところが大きいのですが、写真は色やアングル、ピンボケ具合も含めてかわいらしいです。また、挿絵もパソコンがない頃なので当然手書き。全体的にほのぼのとしていて温かい感じです。白状しますと、こうした手書き感にあこがれてこのサイトをリニューアルしました。しかし本物にはまだまだ遠く及びません。
●文面が誠実
現代の雑誌と比べて文字数が多く、正しく伝えることを大切にしていたのだなあと感じます。たとえば、末尾あたりにある編集部からのお知らせなどは以下のようです。
ときどき「暮らしの手帖にどうして郵便番号が書いてないのですか」というお問い合わせのお手紙をいただきます。
たしかに、これまで私たちは意識して暮らしの手帳に郵便番号をつけずにまいりました。郵便番号制度が発足してまもない頃で、郵政省はこの普及に力を入れておりました。郵便局に手紙を出しに行って「番号が書いていないと着くのが遅くなりますよ」というようなことを高圧的に言われたころでした。
こういう郵政省の一方的なやり方やいい方に対して、当時私たちはひとつのテストをして抗議しました。それは千通の手紙を同時に出してみたのでした。その結果が、その七割までが、郵便番号を書いても書かなくても同時に着いたのです。
そして、その一割は書かない方がなんと早く着いたのでした。昭和52年の夏、49号にのせた<なんのために郵便番号を書くのですか>という記事がそれです。同時に郵便番号を探して書く手間の大変さも、とりあげました。
この記事をのせて、今日まで郵便番号を書かなかったのは、郵政省の都合で、私たちに面倒なことを押しつけることに対しての異議申し立てであったわけです。
あれから六年がたちました。郵便番号制度もかなり普及してまいりました。この号から暮らしの手帖も郵便番号を奥付にのせることにいたしました。ご諒承下さい。
句読点の位置や言いまわしが丁寧かつノスタルジーで、自分の書く日本語の汚さに気づかされます。
現代は短い言葉で直感的に伝えることが重視され、一方で、誠実に正しく伝えることがおろそかになっている気がします。自分はこの暮らしの手帖を参考に、なるべく誠実に文章を書くよう心掛けています。
というわけで、もはやバイブルとなっている中古の暮らしの手帖の良さをほんの少しだけ紹介しました。こんな素敵なものが5冊で525円だなんて、買わない人の気が知れません。とまでは言えませんが、本当におすすめなので機会があればぜひ読んでみてください。