やりたいことや叶えたいことがあるのに、なかなかそこにたどり着けずに悩んだり、焦ったりすることはあると思います。自分もそうでした。しかし以前に比べてだいぶ気楽なスタンスでいられるようになったのは、グランマモーゼスという画家を知ってからです。
グランマ・モーゼス(モーゼスおばあさん)の愛称で親しまれている画家、アンナ・メアリー・ロバートソン・モーゼスの名前は、アメリカでは知らない人はいないと言っても過言ではないでしょう。1860年にアメリカ北東部の小さな農村に生まれたモーゼスは、生涯の殆どを農業や酪農といった仕事に費やし、70歳を超えて初めて油絵の具を手にしました。地元のドラッグストアに飾っていた作品がアマチュアコレクターの目に留まり、80歳になって初めて開いたニューヨークでの個展をきっかけに、画廊をはじめ「タイム」、「ライフ」などの雑誌やテレビ、新聞などにたびたび取り上げられ、いつしか画家「グランマ・モーゼス」の作品と評判は、アメリカ国内のみならず、世界各国に拡がってゆきました。やがて時のアメリカ大統領に謁見、表彰されるほどの名声を博しましたが、モーゼス自身は、生涯そうした華やかさからかけ離れた農村の素朴画家であり続け、それまでの生活を変えようとはしませんでした。そして、101歳で亡くなるまでに1600点もの作品を残したのです。
「生涯の殆どを農業や酪農といった仕事に費やし…」とありますが、結局はその作業で得た知識や感じたものが作品に生かされているわけですから、人生に無駄な事は無いのだなあと思います。
彼女のことを知ってからは、若いうちにしかできないとか、他人より遅れているとか、そういった漠然とした焦りは消えました。何歳になっても、気持ちさえあれば不可能はないと思えるようになりました。彼女のように日々のやるべき事をきっちりやっていれば、いつか訪れるチャンスにそれを役立てることができるかもしれませんし、それができたら本当に有意義な人生ですよね。
というような教訓的なことを抜きにしても、グランマモーゼスの絵が好きです。自然あふれる田舎の風景に小さく人や動物の絵が描かれている作品が多いのですが、見ているだけでいろんな物語を想像できて楽しいです。自分の場合は、以前買った絵葉書を手帳に挟んで、暇なときに眺めたりしています。ぜひ一度、彼女の作品をご覧になってみてください。